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服部文昭『古代スラヴ語の世界史』【読書記録】

『古代スラヴ語の世界史』(白水社)を読みました。

スラヴ人はどこから来てどのように自分たちの文字を獲得したのか。そしてスラヴ人の言語は歴史と共にどのように変化したのだろうか。

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独自の文字を持たなかったスラヴ人社会において「古代スラヴ語」(当時のスラヴ語の「文章語」)がどのように誕生し,またそれがどのように発展(ときには衰退)したか,その言語の歴史を中心に,中世以降のスラヴ人と東欧の歴史について述べた本です。著者は京大の服部文昭先生。

内容について

一般的に,前近代のスラヴ人というのは歴史の表舞台にはあまり登場しない人々だと思います。スラヴ人の文字といえば,ビザンツ帝国コンスタンティヌスとメトディオス(いわゆるキュリロス兄弟)がスラヴ人布教のためにグラゴール文字を生み出し,キリル文字の母体となった…というのは高校世界史でも習うことですが,スラヴ人布教がなぜ企画されたのか,そもそもその「スラヴ人」とはどこの人々なのか,など詳しいことはよく知りませんでした。

本書には,その疑問に答える詳しい記述がなされているのですが,当時において,「自分たちの言葉で」キリスト教典礼ができる,またそのような言葉をもつ,ということが,国家(あるいは民族)の自立のために,大変大きな意味を持っていたことがわかりました。

さらに,中欧から東欧にかけて広い地域に分布するスラヴ人の間で,それぞれの集団が置かれた立場と密接に関係しながら,各地の「古代スラヴ語」が様々な変化を遂げていく様子も興味深かったです。

感想

あまり馴染みのなかったスラヴ人の歴史や,今のスラヴ諸語と古代スラヴ語の関係が知れて面白かったです。前提知識は高校世界史のみで十分で,読みやすい本でした。スラヴ学には前々から興味を持っていたのですが,深く学ぶためにもさっさとロシア語を身に着けないと…という焦りも出てきました。